冬の散歩道
冬は寒いから自然と足早になりますよね。小学生みたいな注意事項ですけど、中高年の皆様、ポケットに手を突っ込んで歩くのは危険ですよ、ってテレビでやっていました。確かに。特に歩きはじめは体が冷えていて動きが鈍いため、ちょっとした段差でつまずく危険性を自分でも感じています。
どうせ速歩で歩くならインターバル速歩がいいそうですよ。姿勢をのびやかにし、しっかりと前をみて、大きめに手を振りながら速度を上げて3分歩き、次の3分はゆっくりと息を整えなが、これを繰り返す。この適度な有酸素運動により全身が活性化するとのことなので、撮影散歩がてらさっそくやってみました。
日陰は凍みて、空気が硬く、体も硬い散歩道。
30分歩いてようやく血の巡りが活性化。
「なんでこんなに寒い日にまで」と言うなかれ、
血流を良くしなきゃ、庭の設計はできませんって。
この手の年寄り向けみたいな指導には一切興味がなかったのに、実践してみたらありがたきご指導なりでありまして、考えたら年寄りに分類されても文句を言えない年齢なわけでして、されど仕事は働き盛りとばかりに山積なので、縮こまっていたり、まして転けてる場合じゃないので、素直に若い衆の意見を聞き入れつつ安全に長持ちさせようと思います。なんたって、下手に転けたら大好きな仕事ができなくなってしまいますからね。
冬の散歩道、若ぶってみたところで無理が出る。全身を省みて、鑑みてみれば、かろうじて若さを保っているのは前頭葉の一部だけ。こういう年寄りじみた物言いって大嫌いだったはずが、この頃そうでもないんですよね。若大将、万年青年っていうのも憧れますが、年相応ってことも大事だなあと思う今日この頃なのですよ。
完成間近の庭は、70代のご夫婦からの「あと十年は二人で一緒に人生を楽しみたいから」というご依頼からでした。なんでもご主人の実家の庭は重森三玲の孫弟子が手がけたものだったそうで、分野は違えどそれを聞いたら俄然イマジネーションに火がつきまして、打ち合わせを重ね変更設計してゆくうちに、お二人の来し方がいかに幸せなものであったかが感じられ、その仕上げの十年にふさわしい庭が出来上がったと思っています。五年前のぼくだったら、それはそれはチャーミングな奥様がご来店して最初に発した「あと十年は二人で」という言葉が持つ重みも、強さも、温もりさえ感じとることがなかったかも、ご夫婦の思いをリアルには理解できなかったかもしれないなあと。あなたは言えますかねえ、そゆこと(ぼくは言えるタイプ、っていうか、言える人でありたいと思っていますが)。てなことがありまして、年相応という感覚は大事なんだよなあと思った次第です。
頭の小部屋に若大将を生息させつつ、その他全身の部位は丁寧にメンテナンスをしながら、無事これ名馬なりのお年頃となりにけり。