Love & Peace は家庭から
怒りが湧き、悲しみが積み重なり、愚かさに嫌気が差し、虚しさで思考が止まり、ついには気味悪さや気持ち悪さが頭を占領するもんだから、たまらず音楽のボリュームを上げて平和な現実への避難民となる。戦争ってこういうものなんだなあと、ある日たったひとりの狂人がトリガーとなって、狂気が爆発的にパンデミックする。集団狂気に正義も正論も意味をなさず、世界の叡智が知恵を絞ってもエンガチョ以外に成す術がない。
庭に出て木を引っこ抜いて土を掘る。女房殿の発案で、使っていない一部を駐車場にするのだ。和室の外に縁台を設て、犬が出やすいようにする。これも女房の指令。次は新調したカーテンを取り付け、家具を移動し、粗大ゴミを分解し切り刻んで普通ゴミで出せるようにし、衣類を仕分けして冬物をクローゼットの奥にしまい、残り時間内に二度と読まなであろう大量の本を処分して・・・鬼軍曹の指令はエンドレス。その他に仕事上の指示があれこれあって、ついでに「そうそう、帰りに猫砂を買ってきて」ときたもんだ。
幸せなことである。爆音が響くことはなく、愛する者の命を脅かされることもなく、庭は花がいっぱいで、公園や住宅街ではサクラを追ってモモの花が満開で、次から次と家族のために体を動かしている。ただひとつの不満は、司令官は進軍あるのみで、ただの一度も我が戦果を誉めることがない。こないだ娘に「お母さんてさあ、ありがとうとか、ご苦労様とか、そういう単語を知らないのかね」とLINEした。しばし間があって「知らないんだと思うよ」と返信あり。
まあいい。本日も晴天なり。狂気に陥らぬためにしっかりマスクをして、余計なことは言うまいて。
・・・さてと、花さく家庭、円満な家庭をひとつでも多く出現させるために、設計設計また設計だ。これは間違いのないこと、人類の Love & Peace は家庭から。