番外編『芝生の庭 3つのポイント』
初夏に傷んだ部分の補修をし、その後は忙しさに寄り切られて俵を割ることの繰り返し。雑草取りと散水は欠かさなかったものの芝刈りは先延ばしで、伸びに伸びた芝を眺めつつ開会式の團十郎を気取って、暫く、暫く、し〜ば〜ら〜く〜!もう暫く放置しといた方が芝も楽であろうなどと、これぞ芝楽〜!と見栄を切ったりしていたら、おやおやどうも色が良くない。慌てて散水を増やしましたが、回復するどころか日増しに色を失ってゆく。もしやこれは・・・やっぱりそうか。10センチ以上に伸びた芝が夏の陽射しとしつこい追い水で蒸れてしまったのでした。
さて対症療法。芝は根元の1〜2センチあたりに成長点がありますので、それを痛めないように丁寧に、いつもよりも深めに刈る。休眠期に繰り返し肥料をあげて「何にも咲かない冬の日は」ってんで根はがっちり伸びたのび太くんなら、この外科手術にも堪えるであろうと信じての荒療治。丁寧に、丹念に、「私、失敗しないので」とドクターX 米倉涼子。オリンピックが終わる頃には例年通りに青々としたブルーのじゅうたん敷きつめて、楽しく笑って暮らすのよ。真っ赤なバラと白いパンジー、小犬の横にはあなた、あなた、あなたがいてほしい。昭和の御世より芝生は幸福なる家庭の象徴ですな。
ところが年号は昭和から平成へ、平成から令和へ、少女から大人へ、大人からお婆さんへ。お爺さんは庭へ芝刈りに、お婆さんは友人たちと連れ立ってマスク着用で歌舞伎座へと時代は変わるよ幾星霜、「芝生は大変だから」とか「もう歳だから芝刈りがしたくない」とかのアンチ族が優勢となりまして、最近の新築では人工芝がスタンダードという、昭和者には悲しき口笛吹くばかり。明日は台風接近で、悲しき雨音、ならぬ恵みの雨が降るそうな。いいぞいいぞ、これこそアマテラスと二人三脚できていることの証しですよ。春夏秋冬移ろう庭と並走する暮らしこそが我が理想郷。
術後にうってつけなる天の計らいに感謝しつつ思うことあり。これまで芝生の絶対条件は「水はけと日当たりの良さ」であると何千回も話してきましたが、五輪のモットー「より高く、より早く、より強く」に今回「一緒に(Together)」が加えられたが如く、 「手を掛ける(Maintenance)」を追加いたします。芝生を育てる絶対条件は、「水はけ、日当たり、メンテナンス」。
芝生に関して忘れられない言葉を追記。かれこれ15年前、庭にバーベキューコーナーを仕立てたいというご依頼で訪問したお宅の庭は、それはそれは美しい、皇居かディズニーランド並にハイレベルな芝生で、こりゃあご主人による努力の賜物に違いないと(世界共通で芝生の手入れは男の仕事)、「見事ですね」って声をかけたんですね。するとご主人、口の端の片方を5ミリ上げるフィリップ・マーロウスタイルで微笑んで、発した言葉が凄かった。
ふふ、芝生の状態がぼくの状態なんだよ。
出たー!ハードボイルド・ガーデナー。男とは面白き生物なり。芝生とは男のロマン溢れる植物なり〜。暫く、暫く、し〜ば〜ら〜く〜! 一夜が明けて予報通りに雨模様の庭。春の花たちはさすがに枯れてしまい、バラたちもひと休みひと休み。おお、今年はライムが豊作だ。
ふふ、庭の状態がぼくの状態なんだよ。次は花だ。灼熱を楽しみつつも Love & Peace 、夏は祈り季節なれば、ホーシーツクツク鳴き出す晩夏をイメージしつつ、挽歌の情緒漂うガーデニングと参りましょう。
今日は番外編で我が家の庭でした。ガーデンデザイナーはどんな風に庭を楽しんでいるのか、興味のある方はこちらへどうぞ。→→→ 『横浜ガーデンデザイン!幸せな庭のレシピ』