パラダイムシフト、あなたも過去に何度か、ガラッと世界が変わったという経験があると思います。ぼくには大きくは3回、小さい規模なら100回ほどはあったと思います。普段仕事上では、庭をリフォームしたことで世界が一変したという声を多々頂戴しましたし、それが設計のひとつのテーマにもなっています。
大きかった3回の内容は長くなるので省略して、自分自身にもう一度、せめてもう一度デカいヤツがやってこないかなあと思っていて、還暦を過ぎたらさすがに、あのフレッシュに満ちた奇跡の現象を引き起こす原資はすでに尽きてしまったのか、とか、いやいやそんなはずはない、年齢や現状などに関係なく思いもよらない感動の瞬間はやってくるのだと、いつもそんなことが頭の隅っこにこびりついているのです。
どう変わりたいのかではありません。仕事と暮らし全般において夢、理想とする到達点は、そういう思考がガーデンデザインの中核ですからお作法のように常にイメージできていて、それはそれ、そっちに向かって帆を張り歩を進めるのみ。世界が変わるとはそのイマジネーションとは違う次元の、想像を超えた夢のまた夢みたいなことなので目標ではない。例えば「恋に落ちる」というような、予想や想定している日常の外側から、まさしく世界を一変させる現象が訪れるようなあの感じ、うん、あの感じ。自分の変化ではなく、突然吹いてきた風に翼を広げたら楽々と天空へと上昇するような。
そうそう、ウインドです、ウインドサーフィンのウォータースタート。沖合いで波に揉まれて立ち泳ぎをしているところに絶好の風が入ってくる。ボードに片足を掛け、海面からセールを少し上げたらそこに入ってくる空気のボリュームによって、ほぼ自動的に体が持ち上がってボードに立ち、スタートの体勢になれたあの感じ。水中から水上に、さっきまでの不自由さから解放された瞬間に訪れる感動です。